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生物学論文紹介同人サークル「ハイアイアイ臨海実験所」です。
ここでは、気になった学術論文を紹介したり、同人活動を告知したりします。

2013年07月12日

【論文】白亜紀の超巨大ウミガメ

A Giant Chelonioid Turtle from the Late Cretaceous of Morocco with a Suction Feeding Apparatus Unique among Tetrapods.
Bardet et al. (2013)
PLoS ONE 8(7): e63586. doi:10.1371/journal.pone.0063586


【論文】白亜紀の超巨大ウミガメ

亀藤です。

我らがハイアイアイ臨海実験所ですが、所長も亀藤も揃って英語論文を読むのが遅いため、特に人気のある古生物系学術論文はいつも他のサイトやブログに速報されてしまうのですが、今回は珍しくどこも取り上げていないようなので今のうちに更新しておこうと思います。

今日紹介する論文はこれまでに見つかった中でも最大級とされるウミガメの化石についてです。
その発掘された化石がコチラ、

Ocepechelon fossil500.jpg
Ocepechelon bouyai。カタカナで表現するとオセペケロンになるのでしょうか。
この写真の頭骨は最大長約70cm。オセペケロンの頭骨は今までに知られているウミガメ化石の中でも最大のものです(体長4mとされるアーケロンよりも大きい)。残念ながらオセペケロンは写真にある頭骨しか発掘されておらず、下顎を含めた顔全体、また、甲羅を含めた体全体の大きさがどれくらいであったかについてはよくわかりません。しかし、この特徴的な頭骨からどのような生活をしていたかについて考察されています。

中段左側の正面からの写真を見るとわかりやすいのですが、オセペケロンは口吻部が筒状の構造をしています。現生アカウミガメの頭骨写真と比較してみると、アカウミガメはいかにも「噛み潰すぞ」感が溢れているのに対し、オセペケロンにはそうした気配が感じられません。
loggerhead bone.jpg
この特徴的な構造からオセペケロンは suction feeding - 吸い込み型の捕食行動をしていたのではないか、と述べています。手元に資料がないので図で紹介できないのですが、論文では現生魚類や鯨類の一部など、この吸い込み型捕食行動を行う他の生物の頭骨との構造の比較がされています。suction feedingを行う生物の中でも特にオセペケロンに特徴的なのが、この筒状の構造が骨でできていることです。たとえばマッコウクジラなどもsuction feedingを行いますが、筒状の骨を持っているわけではありません。多くの生物が唇(?)のようなsoft tissueを利用して吸い込み方捕食を行っていますが、骨の形から筒状の生物は他に知られていないようです。また、鼻孔の位置がずいぶんと上向きなところから、海でも特に表層域で生活していたのではないか、と考察されています。


ご丁寧に動画で再現。

Ocepechelon reconstruction.jpg
↑こちらが復元画。頭しか見つかっていないので首から後ろがカットされているのが残念です。今回の化石はモロッコで発掘されたものです。同地域の同年代にはモササウルスや首長竜、他のウミガメ化石など多くの海棲生物化石の産出が知られています。今後もこの地域の化石発掘が進むことで、オセペケロンの甲羅も含む全体像を復元できるといいなぁ、と期待しています。カメフジツボ類の出現は新生代の真ん中まで待たなければなりませんが、エボシガイやスジエボシに近い仲間はもう出現しているはずです。オセペケロンも表層を生活圏としていたようですし、エボシガイ集団に住みかを提供する流木のようにたくさんのエボシガイを付着させて泳いでいたかもしれません。


本論文には関係ありませんが、我々ハイアイアイ臨海実験所はいつも速報性こそないものの、「なんで今頃?」みたいな1980年代の論文とかも突然更新したりします(特に沼が)。今までほとんど誰にも知られていなかった、そして我々が発掘しなければこのまま誰にも知られることなく朽ちていくであろう研究成果を発掘するというニッチを開拓、という意味でこれはこれでいいのかな、と思わないでもありません。そんなわけで次元断層ニッチにひっそりと存在するハイアイアイ臨海実験所、ひさびさの参戦となる夏コミもよろしくお願いいたします。
posted by 亀藤 at 22:36| Comment(0) | 論文紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする