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生物学論文紹介同人サークル「ハイアイアイ臨海実験所」です。
ここでは、気になった学術論文を紹介したり、同人活動を告知したりします。

2012年04月12日

フジツボフィギュア紹介Vol.3「シロスジフジツボ」

「奇譚クラブ」さんより発売されたフジツボフィギュアの紹介、第三弾です。

第三回「シロスジフジツボ」

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シロスジフジツボ(フィギュア)

フジツボフィギュアラインナップ全9種のなかでも、本物の入手が一番容易なのはこのフジツボかと思います。
本種は、内湾の潮間帯上部で簡単に見つかります。また内湾でなくとも、河口に行けばだいたい見つかります。幅数十メートル程度の小さな河口にもいます。河口にアタックすれば、だいたい日本中どこでも見つけられると思います。

とてもありふれたフジツボ、「駄ツボ(だつぼ)」という感じですが、これがなかなか、味わいぶかい種かなと思います。

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野生のシロスジフジツボ1

シロスジフジツボは、タテジマフジツボ類という一大グループに属しています。このグループの最大の特徴は、内湾や河口のような、海水と淡水が交じり合う汽水域に分布することです。

汽水域では、潮の満ち干きや河川の流量変化によって、水の塩分濃度がめまぐるしく変化します。汽水域をすみかとする場合、そのような環境変化によく適応しなければいけません。
多数あるフジツボのグループの中でも、汽水域に生息するグループはふたつだけです(タテジマフジツボ類とヨツフジツボ類)。どちらもフジツボの進化の歴史において非常に新しいグループであり、成体が優れた浸透圧適応能力を有していることが実験によって確認されています。フジツボ界の期待のルーキーという感じです。また、ヨツフジツボ類の分布はオーストラリアが中心ですが、タテジマフジツボ類は世界中の汽水域を席巻しており、まさに若手の星であります。

タテジマフジツボ類のうちいくつかの種は船に付着して世界中の港を行き来し、本来の生息域でないところにまで分布を拡大しています(外来種)。日本には9種のタテジマフジツボ類が生息しますが、このうち実に5-6種は外来種です。外来種との競合によって、日本の在来種が減少している例も知られます(サラサフジツボなどで顕著。東日本の個体群はほぼ絶滅)。一方で、外来種に対して全く負けていないというか、うまく共存している在来種もいます。それがこのシロスジフジツボです。

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野生のシロスジフジツボ2
(鉄格子に付着している様子。木材、ガラス、プラスチックなどにも付着する)

東京湾などでタテジマフジツボ類の分布をみると、シロスジフジツボは潮間帯の一番上に多く見られます。おそらく他の種に比べて、水から出た状態での生存性が優れているのでしょう。具体的には、乾燥耐性、高温・低温耐性(温度変化は水中よりも空気中の方がはるかに厳しい)、紫外線耐性などが優れていると考えられますが、まだよく分かっていません。

シロスジフジツボは「汽水域」「潮間帯上部」というとても大変な環境で生きているたくましい奴です。苦労人です。どうか「駄ツボだ……」と邪険にせず、可愛がってあげてください。

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野生のシロスジフジツボにフィギュアのシロスジフジツボを紛れ込ませた様子


「シロスジフジツボ」データ
<学名>
Fistulobalanus albicostatus(Pilsbry, 1916)
Balanus albicostatusとする意見もある。
<高次分類>
完胸超目無柄目フジツボ亜目フジツボ超科フジツボ科タテジマフジツボ亜科
※フジツボ科(タテジマフジツボ種群)とする意見もある。
<分布>
東太平洋からインド洋にかけて広く分布。汽水域の潮間帯上部に優占する。
<その他雑学>
あまり大きくならないので食用には適しません。

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シロスジフジツボ

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タテジマフジツボ(タテジマフジツボ類の代表的な外来種)


フジツボ―魅惑の足まねき (岩波科学ライブラリー) [単行本] / 倉谷 うらら (著); 岩波書店 (刊)

フジツボ類の最新学―知られざる固着性甲殻類と人とのかかわり [単行本] / 日本付着生物学会 (編集); 恒星社厚生閣 (刊)

Barnacles: Structure, Function, Development and Evolution [ハードカバー] / D. T. Anderson (著); Chapman & Hall (刊)

posted by 沼 at 22:53| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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