CANA1W37_02.jpg
生物学論文紹介同人サークル「ハイアイアイ臨海実験所」です。
ここでは、気になった学術論文を紹介したり、同人活動を告知したりします。

2015年10月10日

【論文】ヒグマの垢擦り

かめふじです。珍しく研究者以外のカタギな方々と飲む機会があり、自分の研究内容やら最近読んだ論文の内容やらをざっくりしゃべったところ、研究者でもなんでもない方々にも非常に楽しんでいただけて、あぁ俺がやってることも読んでるものもそれなりにみんなの興味をひく面白いものなんだなぁ、別に研究者ばかりが面白いと思ってるわけでもないんだなぁというとても新鮮な気持ちになったので、超ひさしぶりに論文紹介します。

本日紹介する論文はコチラ、
Tool-use in the brown bear (Ursus arctos)
Deecke VB (2012)
Animal Cognition, 15(4), 725-730.

ヒグマの垢擦り

人間が人間たるゆえんと言いますか、我々ホモサピが他の動物とどう違うのかを考えてみますと、様々な目的のために様々な道具を利用するところが挙げられるかと思います。一方で、それがホモサピのみに許された特殊能力か、と言われると実はそうでもありません。特に霊長の仲間なんかは木の枝でシロアリ釣ったりなんなりと道具利用をしますし、本邦のニホンザルからは海水で砂を落とすためにイモを洗うという道具利用が報告されました。

一方で霊長類以外の哺乳類で道具利用となりますと、この論文によればこれまで4例しか報告されていないということでした。まず挙げられるのがラッコです。石を持ってお腹の上に乗せた貝やらウニやらを叩き割って食べるあのシーンは多くの方が動物番組の類でご覧になったこともあるでしょう。次に挙げられるのがゾウです。ゾウは鼻を使って木の枝を器用に振り回して周囲をブンブン飛びまわるハエやらナニやら雑多な虫どもを追い払います。ここから少しマイナーな行動になりますが、オーストラリア西海岸側のミナミハンドウイルカ個体群は、ベントスなど海底の餌をゴソゴソ探すときに海綿(カイメン)をくわえて採餌するそうです。これは海底に潜むエイの毒針から口を守るためにそのような行動をとっているとされています。最後の例はザトウクジラです。どこのザトウクジラもやるというわけではないようですが、どこぞの個体群は口から泡を吐いてカーテン状にして、餌である魚の群れを一つにまとめて一気にバクンと食べるという行動をとります。この行動はbabble net feedingと呼ばれており、僕も何回かテレビで観たことがあります(残念ながら日本にはザトウクジラは子育てのために来ているので、babble net feedingは見られません)。

そして今回の論文では霊長以外の哺乳類で5例目となる道具利用を報告しています。
barnaclebear.jpg
ヒグマの垢擦り行動です。アラスカあたりにザトウクジラの漂着死体があったそうで、そのヒグマは美味しくクジラをいただいていたそうです。で、しばらく観察を続けていると川に入ってなにやらゴソゴソしていると、両手で手頃な石を持ちあげました。そのまま観察していると…なにやら顔についたクジラの脂を落としているようだ。望遠で写真を撮っているのですが、よく見るとこの石にはフジツボが付着している(Balanus sp.)。
e.jpg
フジツボのザラザラでクジラの脂を落とす、まさにフジツボ付き石を軽石として使って垢落としをしているではないか、という内容でした。ここではBalanus sp.としているけど、川っぽいから淡水耐性の強いAmphibalanusかFistulobalanusかな?

フジツボ付きの石はさすがにギザギザすぎるのでやりませんが、僕も学部の頃にバイクで離島を回って野宿してたときには海辺でちょうどいいギザギザ具合の六方サンゴを拾って軽石代わりに垢を落としたものです。強烈な日差しの中で数日シャワーを浴びずにサンゴで体をこすると垢が見事に貯まってなかなか面白い、とか言うとまた引かれるのでこの辺にしておきます(ここ10年くらいは野宿してません(たぶん
posted by 亀藤 at 11:50| Comment(0) | 論文紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: